私が勤務する診療所の入り口付近には、いつ誰が植えたのかコデマリの木が自生している。
樹高1~1.5mの低木で都内でもよく見かけるが大抵は、地表を覆うように育っている。
ところが、診療所のそれは、二階部分まで這えあがるほど成長し、一本の木であるが樹高は、3mほど。
横に広がった枝は6m位あるだろうか。
横に広がった枝は6m位あるだろうか。
まるで藤棚の藤の木のように枝を広げている。
珍しい樹形で近所でもちょっと評判になっている。
しかし、棚などで支えられているわけではなく、絡み合った細い枝だけで広がっている為、自重に耐えきれず垂れ下がり、通行の妨げとなってしまう。
そこで、年に何度か広がり過ぎた枝を選定する。
今年もその季節がやってきた。
木曜日の午後は休診。
先週から選定の機会をうかがっていたが、天候不良などもあり実行できていない。
職場スタッフからは、早くやってほしいとの声が上がっている。
剪定作業ように準備してあるビニールシートなどが邪魔でしょうがないらしい。
剪定作業ように準備してあるビニールシートなどが邪魔でしょうがないらしい。
盛夏の暑さからは、だいぶ涼しくなり、朝から曇り空で作業を行うには好条件。
明日からは、また雨空の予報。
行うなら今日しかない。
明日からは、また雨空の予報。
行うなら今日しかない。
今回は、普段より多めに刈り込むと決めていたので脚立を用意し、地上から2m位の位置まで刈り込んでいった。
一通り作業を終えて、見上げると二階部分の枝がものすごく茂っている。
診療所は、元々病院として営業していた四階建ての建物である。
しかし、10年前に診療所となり、二階以上部分は介護型施設と転換したが、それも3年ほど前に廃止。
以来、一階フロア以外は、使用されていない。
コデマリの枝は、この無人となったフロアまで成長し、外通路の手すり部分に絡み合っている。
コデマリが進出している部屋の窓は、枝が邪魔して開かなくなってしまっていたし、何より排水口に枯葉などが詰まってしまうので清掃を兼ねて伐採が必要だった。
予報では翌日に大雨が降るとの事。
排水口がふさがれば一階フロアに雨漏りが発生する危険性もあるので、とりあえず様子を確認し、必要ならば枝の選定作業を行う事とした。
二階フロアに上がり、窓から外へ出ようと試みるが、元介護施設の窓は、利用者の転倒防止の為にストッパーが付いており、外に出れるほど開かない。
何か所かまわりようやくストッパーが動く窓を発見。そこからようやく室外に出る事に成功。
剪定鋏を持って覆い茂ったコデマリに近づくと黒い影がサッと茂みの中に逃げ込んだ。
野良猫だ。
数日前にスタッフの女性が二階部分の水道管の上を歩く猫を見たとの不思議な話を聞かされていた。
半信半疑だったが、その時の猫に間違いない。
人がいない安全な木陰に住み着いていたのだ。
この時、嫌な予感が走った。まさか…。
この予感はすぐに的中する。
野良猫が走り去ったその場所に2匹の仔猫がうずくなっている。
安全なこの場所で子育てをしていいたのだ。
人を全く恐れる様子もなく、クリクリとした目でこちらを見つめている。
親と同じキジトラともう一匹は、キジ白。
まだ、そのペットロスから立ち直れていない状態なので余計に可愛く見える。
しかし、次に頭をよぎったのは、「果たして親猫は、戻ってくるだろうか」という事だった。
余り近づきすぎたりしては、親猫に見捨てられてしまう恐れがあると考え、とりあえず排水口の写真と子猫の様子を撮影し、上司に報告。
相談の上、選定作業は、子猫が巣立ってからとした。
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