今日は、朝から降ったり止んだりの雨空。
前日の様子が気になる。
仔猫はその後どうなったのだろう。
職場でも話題になっている。
しかし、うかつに近づけば、親が警戒してしまう。
仕方なく、玄関付近で耳を澄ませる。
すると、かすかに子猫の鳴き声が聞こえる。
「親猫がまだ帰って来ないのか?」
前日の様子からの推測では、仔猫は生後1月前後。
作業後から放置されていたとしたら、すでに12時間は経過している。
その間、何も飲まず食わずで、大丈夫なのか。
不安がよぎるが下手に関与して本当に親から見捨てられたら取り返しがつかない。
様子を見守る事したがやはり気になる。
30分に一度は、泣き声を確認しに玄関に通う。
途切れ途切れの鳴き声は1匹だけ。
徐々にか細くなっている。

前日に発見した2匹は、明らかに成長に差があった。
親似のキジトラは、丸々太り一回り大きい。
一方は、痩せていて元気もなかった。
もしかしたらその小さい方を放棄したのではないか。
昼になっても鳴き声は、止まず。
午後の診療終了時間になっても。まだ親猫は来ない。
このまま自然に任せるか保護するか迷いに迷った。
仔猫は、人に警戒心を持っていなかったので簡単に捕まえる事は、できるだろう。
しかし、まだ生後一月前後。
離乳食を食べ始めているのかも不明なほど小さい。
仮に保護しても育てられるのか。
このまま自然に任せるのべきなのだろうが、亡くなった場合にその後の処理をする羽目になるもの嫌だ。
何より前日の愛らしい姿が頭を離れない。
日も傾き始めた17時、親が放棄したと判断し、保護する事を決断。
前日の窓から屋外に出て子猫たちがいた場所に向かうと、子猫が巣(?)から抜け出して欄干の上までよじ登っている。
必死に親猫を呼んでいたのだろう。
やはり小さいほうの子猫。もう一匹は、付近にはいない。
大きいほうだけ親は連れて行ったのだ。

子猫は何の抵抗もなく捕獲できた。
保護直後は、段ボールから這い上がろうとするなど意外と元気な様子。
ニャーニャーと鳴いている。
薄っすらと乳歯も確認できた。
生後3~4週間くらいか。
思ったより小さく幼なかったが、これなら何とかなるだろうと一安心。
保護はしたものの当日は夜間診療対応なので、19時半まで勤務が続く。
もうしばらくは、このまま我慢させるしか方法がない。
業務終了後にすぐに餌を購入し、翌日に獣医に連れていく事とした。
途中、水だけでも思って与えようとしたが飲まず。
自分で容器から摂取する事は出来ないのか。まだ、母乳しか受け付けないのか。
勤務中という事もあり、それ以上は、何も出来ず、終了時間まで段ボール内で保護。
19時に勤務終了。後片付けなどをすまし、急いで近くのペットショップ向かう。
そこで、離乳食と猫用ミルク。哺乳瓶を購入。
ついでに店員に子猫の様子を見てもらう。
やはり生後1月前後。離乳食を食べ始めたかどうかの月齢ではとの事。
ここまで育ったのだから大丈夫では、という言葉に少し安心。
そのまま自宅へ持ち帰る。

さっそく離乳食を与えてみるが全く見向きもしない。
というより食べ物と判断していない感じ。
お腹が空いていているので、すぐに食べるだろうという甘い考えは吹き飛んだ。
哺乳瓶を煮沸消毒し、ミルクを作り抱きかかえて飲ませようとするがこちらもダメ。
哺乳瓶の乳首を一度は咥えたが、すぐに離してしまう。
もっと細いスポイトのようなものでないと受け付けないのか。

いったん巣箱に戻すとうずくまって力み、排便のしぐさ。
おしりの付近に黒い塊がモリモリ出てきたが、子猫は、その場を移動せずうずくまったまま動かない。
おしりを濡れティッシュでふき取る。

ぐったりとしたままの仔猫に何とか食事をさせようとネットでミルクを飲まない原因を検索。
いくつかの要因が確認できた。
一つは食事前に排便を促すこと。排便しないと満腹感から食事をとらないとの事。
今しがた排便したのでこの点はクリアしたか。
次に「体温低下」。
まだこの時期の仔猫は、自分では体温調整ができないので親や兄弟にくっついて温まるのだとか。
とすれば長時間、放置されたことになる。
しかも、保護してからも段ボールに入れただけで温める処置を行っていないかった。
先のペットショップでもすぐに温めてとアドバイスされていた。
慌ててペットボトルにお湯を入れた簡易湯たんぽを作り、段ボール内へいれる。
仔猫はその湯たんぽにくっつき落ち着いた様子を見せた。
やはり寒かったのか。
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湯たんぽだけでは、温まらないので使い捨てカイロもいれて温める。
徐々に体温が上がって来るとリラックスした様子を見せ始める。
体に触れると暖かい。逆に今まで冷え切っていたことが理解できた。

落ち着いてきたところで再度エサやりに挑戦するがやはりミルクを飲まない。
今度は乳首を噛むこともしない。
そして明らかに衰弱している。
自分一人ではどうにもならないと悟り、妹に連絡。
妹はこれまでも犬や猫を何匹も育てており扱いには慣れている。
すぐに向かうからという返事だが、館山に住んでいる妹が到着するまで2時間はかかる。
それまでは、ともかく体温を上げることに専念することに。
ようやく妹が到着したのは、日付が越えた1時過ぎ。
「もう死んでるじゃないの」というのが仔猫を見た妹の第一声。
かすかに動くお腹を見て生存を確認しエサやり開始。
妹は細いスポイトを持参してきた。
犬歯のあたりからスポイトを入れて飲ませようとするがやはり飲まない。
何度か試みるが無理やり入れると誤嚥を生じる恐れもあるので口腔からの摂取は、困難と判断。
残る方法は、点滴による栄養補給。
24時間営業している獣医を探し、そこに持ち込むことになった。
幸い獣医は、すぐに見つかり2人で子猫を運ぶ。
国道4号線沿いの動物病院に到着したのは2時過ぎ。
受付を行っている間に子猫は処置室へ。
名前を聞かれたが当然まだない。
治療費などの誓約書などにサインをしている間に処置が終了したというので処置室へ案内された。
保温機の中に入れられた子猫には、点滴チューブが付いている。
小さな前足によく入れたものだと感心するが、逆に哀れでならない。
医師からは、かなり衰弱しているので危険な状態であることが告げられた。
一晩持つかどうか。
うまくいっても一週間は、入院が必要との見立て。
治療費の事もあるのでどこまで治療しますかと心配顔。
ともかく助けてほしいと頼む。
最後にこの子を飼う気ですかとの問い。
すでに腹は決まっている。
「元気になれば引き取ります。」
病院に預けて帰宅。